青森県弘前市のおせんべいとお菓子の老舗店「しかないせんべい」を訪ねたところ、隣にいくつもの鳥居が立ち並ぶフォトジェニックスポットを発見!「稲荷神社」とのことで御参りしてきました。このブログでは、弘前市新寺町にある稲荷神社の由緒や御利益について調べてみました。
新寺町稲荷神社の由緒・白狐とは
日本に約8万社ある神社のうち3万社以上が稲荷神社とです。稲荷神社は全国各地にあり「お稲荷さん」と呼んで親しまれ、昔から人々の生活に寄り添う身近な神社です。
この新寺町の稲荷神社は、寛永5年(1628年)に創建されたもの。領地の繁栄を願った4代津軽藩主信政が「熊谷稲荷のある土地は繁盛する」という言われにあやかって、東京浅草(当時は江戸)の雷門浅草寺境内にあった「熊谷稲荷」から勧請しました。※勧請(かんじょう)=神様を分霊してまつること。
かつて江戸の浅草寺境内にあった「熊谷稲荷」という神社は、熊谷安左衛門という人が建てた神社で、白狐を祀った稲荷であることが特徴です。白狐を祀ってある所は全国でも熊谷安左衛門の墓所のある浅草の本法寺と、青森弘前の津軽藩公が祀った「稲荷神社」の二ヶ所だけというから、この弘前の稲荷神社は貴重な珍しい稲荷のようです。
白狐(びゃっこ)とは、年を経て毛が白くなったキツネのことで、神通力をもつとされていました。白狐は通常の人間の前には姿を見せず、稲荷信仰心の厚い人に対してだけ、その正体を現わすといわれており、津軽史によると藩公が江戸へ参勤交代の時に白狐があらわれて、不思議な霊験があったという話があるのだとか。
さて、熊谷安左エ門の直弟子によって弘前にもたらされた「新寺町稲荷神社」は、当時は神仏習合のために、神社と一緒に「白狐寺」が建てられました。
境内にある看板にも「白狐寺」の記載があります。明治時代の神仏分離令により、白狐寺が廃寺になると、仏体のお稲荷さまは貞昌寺に移され、新たに神道の御祭神(宇賀魂命・猿田彦神・大宮能売神)が勧請され、社名も現在の稲荷神社に改称されました。
熊谷稲荷がある土地は繁盛する・・・お隣にある「しかないせんべい」は大正15年創業から続く人気店。
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— らぷる🍎@しかないせんべい【公式】 (@shikanaisenbei) November 17, 2021
人気菓子の「らぷる」は、弘前土産の定番の一つと言われるほどの評判だそう。お稲荷さんは商売繁盛の神様とも聞いたことがありますが、実際にご利益があるようですね!
お稲荷さんは狐の神様ではない?!
そうした由来により、新寺町のお稲荷様は昔は「白狐寺稲荷」と呼ばれ、稲荷神社では狛犬の代わりにキツネの像が安置されています。なので、稲荷神社と言えば「狐の神様」がお祀りされていると思っていたのですが、どうやら違うようなのです。
稲荷神社の神様は「おいなりさん」「お稲荷様」などと呼ばれていますが、 「稲が生る=いなり」ということから、お稲荷様と名づけられました。 稲の精霊を神格化し、五穀・食物を司り、稲の豊作にご利益があると崇敬される神様は、「宇迦之御魂大神(うかのみたまのおおかみ)」です。
ご祭神である宇迦之御魂大神(うかのみたまのかみ)のお使い(神使)が、白狐となります。
ご先祖様方は、自然界の狐を神聖な動物として捉えていました。冬の間は冬眠していて、農事が始まる春になるとから里に降りて姿を現し、秋の収穫が終わる頃に山へ戻っていくため、農耕を見守る神の使いと考えられてきたのです。
全国の稲荷神社に鎮座するキツネの像は、お稲荷さんの使いとして境内に控えているんですね。狛犬ならぬ狛狐ですね。さらに、キツネはさまざまな宝具を口にくわえています。
宝具にはそれぞれ意味があり、
稲束は、五穀豊穣
鍵は、富貴、豊穣、諸願成就を表す蔵の鍵
巻物は、仏教の経典
宝珠は、諸願成就の象徴です。
新寺町稲荷神社の狐は、宝珠? お餅?「らぷる」をくわえてるようにも見えますね。
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境内には、別のキツネ像があるのですが、こちらの狐がくわえているのは巻物でしょうか?
狐の像に赤い前掛けが掛けられているが気になります。これは、地蔵信仰からきた風習のようで、信仰心の厚い人が奉納しているようです。手拭いの頰被りは、雪除けとして巻いてもらった東北ならではの風習のようです。
宇迦之御魂大神(うかのみたまのかみ)のご利益
古事記によると、宇迦之御魂神は須佐之男命(スサノオ)と神大市比売命(カムオオイチヒメ)の娘として、兄の大年神(おおとしのかみ)とともに生まれたと記されています。
「ウカ」は穀物・食物の意味で、穀物の神です。稲・穀物・農業に関わることや、昔の稲は、今のお金のような価値のあるもの。商業が発達してきた江戸時代頃からは、商業の神としても信仰されてきました。
宇迦之御魂神(ウカノミタマ)のご利益・神徳は、
五穀豊穣、商売繁盛、病気平癒、健康祈願、技芸・芸能上達、金運上昇などです。
新寺町稲荷神社 鳥居
また「お稲荷さん」と言えば、鮮やかな朱色の鳥居がいっぱい並んでいる神社が多い印象があります。
新寺町稲荷神社もかつては、70以上もの鳥居があったそうです。これは、願い事が「通る」「通った」の意味から、鳥居を感謝の気持ちとして奉納することが江戸時代以降に広がったためで、鳥居には奉納した方のお名前が刻まれていたりします。
その鳥居も現在は老朽化し、26本まで減少してしまいました。そこで、新寺町稲荷神社に「鳥居を建てる」Webサイトがしかないせんべいによって作られていましたよ。3000円から、鳥居建立に協力できるそうです。
ちなみに鳥居の朱色は、稲作に必要とされる陽光や温かさを運んでくる色と稲荷神社では考えられています。また、赤色は魔除けの色であり、人間の暮らす場所(俗界)と神社の神聖な場所(神域)との境界であり、神社に不浄なものを入れないための結界としての役割があるそうです。
いくつもの朱い鳥居をくぐって歩くと、別の世界に抜け出たような不思議な感覚がありました。
御神木? 樹齢200年のケヤキ
稲荷神社の敷地には大きな木が立ち並び、周りの建物から一線を画した空間になっていました。弘前市内最大級の樹齢200年のケヤキなど、貴重な古木が保存されています。
弘前といえば桜ですが、敷地内にはソメイヨシノの木もあるようで、 さくらの見ごろとなる4月下旬から5月初旬に訪れると、鮮やかな雰囲気を楽しめるかもしれません。
新寺町稲荷神社 場所・住所・地図
かつては夏の例大祭の宵宮や津軽神楽で賑わいを見せていたようですが、現在はあまり人の気配がなく、御朱印もない様子でした。
新寺町稲荷神社
[住所]〒036-8214 青森県弘前市新寺町33
[電話番号] 0172-33-3167
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